6月の丑三つ時。娘の部屋から叫び声が聞こえた。
まさか自分の娘がムカデに嚙まれるなんて……
娘さん、右腕の力こぶのあたりを嚙まれていました。
人生とは不意にいろいろなことが起こるものだ。
ムカデに噛まれた人が敏速に対応できるように、最初に取るべき対処法を紹介。
その後、その対策の背景、理由などを紹介していきます。
とにかく今、噛まれたので緊急にどうしたらいいのー?! って人は下記のまとめを見てください。
先取りまとめ
- 患部にムカデの顎肢(がくし)など体の一部が残っている場合は、ピンセット、お箸などで取り除きます。 ⇒ 素手では触らないようにします
- 水道からの流水で患部を洗い流す
- 抗ヒスタミン成分のステロイド軟こうを塗る ⇒ 我が家では「ムヒアルファEX」がいつもの常備薬です。
- アイスノンをタオルで巻いて患部に当て、冷やしました ⇒ 娘さん、そのまま寝落ち。朝まで眠る
- 翌朝、まだ少しの腫れと痛みあり ⇒ 頭痛、発熱なかったため登校
- 給食を食べるころに痛みがなくなっていることを自覚

沖縄のムカデ、タイワンオオムカデ

私は沖縄恩納村に住んでいますが、出会うムカデはこいつばかりです。
体長は最大で10-15㎝にもなります。
でかっ!!
以前であったタイワンオオムカデと私の手を比較しています。

このタイワンオオムカデは10センチぐらいですね。
これに噛まれたらさぞかし痛いだろうなー。娘ちゃん、大変だったね……。
初期症状
- 痛み
- 腫れ
まずこの2つは絶対です。
噛まれた部位が熱くなったりもしますし、部位だけではなく体全体が発熱することもあります。
患部の皮膚にムカデのあごの部分(顎肢(がくし))や足が食い込んでいたら素手で触らずにお箸やピンセットで取り除きましょう。
下の写真の黒い牙のような部分が顎肢ですね

顎肢には毒が付着しているため素手で触らないことで二次被害を防ぐことができます
そして、この後の対応がまだまだまとまっていないようです。

実際、ネットで検索すると、お医者さんたちも迷っているんだ……ということがわかります。
冷やすべきか? 保温すべきか?
ムカデの毒がタンパク質成分であるという記述がいろんなサイトに見られていますが、一方で、ムカデの毒成分がまだ詳細にわかっていないと書かれているサイトもたくさんあります。
科学の発達した現代に、まだムカデの毒の成分が明瞭に分析されていないことに驚きます。
加温すべきという意見、冷却すべきという意見。それぞれの言い分は以下の通りです。
加温した場合 | 冷やした場合 | |
患部の洗浄 | お湯 ⇒ タンパク質成分の毒は熱で分解されやすいのでお湯が良い | お湯をかけることにより血流が良くなり毒が体全体に速く運ばれる ⇒アナフィラキシーショックが懸念される ⇒ よって水が良いという考え |
洗浄後の患部の保持 | 血流が早くなることで体内に入った毒が速く体全体に運ばれる ⇒ アナフィラキシーショックが懸念される | 冷やしても温めてもあまり効果に差は見られないという研究結果もある。参考資料① |
参考資料①
つまり、温めるべき、冷やすべき。どちらの意見が正しいと言えるエビデンスがまだ乏しいのが現状であります。
2021/9月現在、明瞭にわかっていること
- ムカデの毒によるアナフィラキシーショックは多いに懸念される
- 毒の成分は明瞭にわかっていない ⇒ ヒスタミン、ポリペプチド、セロトニン、酵素などに分かれると言われているが、すべての医療系サイトが同じ文言で統一されておらず、「わからない」と明確に書いているサイトも見受けられる。
- ムカデは「顎肢(がくし)」で噛みついて毒を出し、足で皮膚に傷を作り、尾にあたる「曳航肢(えいこうし)」で傷口に毒を広げる
- 毒を口で吸いだす行為はNG ⇒ 口腔内に傷がある場合は、そこから毒が入ってしまう
- 抗ヒスタミン成分のステロイド軟こうは有効
プロネイチャーガイドとして山でツアーガイドを行っている私は、以上のことを理由に上記「まとめ」内の判断をし、行動をしています。
現場では判断し行動することが求められているからです。
判断基準
なぜお湯ではなく水で洗浄するのか?

毒は吸引すべきか?
昔の映画やテレビで、毒のある生物、例えばヘビに噛まれたとき、口で患部の毒を吸い出してペッ!! と吐き出すシーンは今でもかなりの人の記憶に残っているようで、体から毒を出すときの方法として、
口で吸いだす
という手段はあまりにも有名ですが、現代では止めるべき方法として語られています。
口の中に傷がある場合、そこから毒が体内に入ります。毒を口で吸い出す行為は絶対にやめましょう。
ポイズンリムーバーは有効か?
毒を絞り出す道具のことを「ポイズンリムーバー」と言うのですが、こんな奴です。


現在、この器具の有効性が揺れています。
繰り返し患部を吸引することで患部の皮膚をより傷つけてしまう可能性が高いからです。
ムカデの毒はハチの場合のように体内深くに毒針で差し込まれて注入される類のものではないので、今回のムカデの場合は数回の使用にとどめるのが良いと思います。

患部の洗浄後の経過を見ていきましょう
中期症状
軽度 | 痛み ⇒ 痛みは12時間ほど続くことも 患部全体の腫れ ⇒ 腫れは数時間続くことがある 患部の発熱 ⇒ 冷やしたくなるが冷やさない |
中度 | 患部だけではなく体全体で発熱 発疹 しびれ ⇒ 病院に行って経過を説明し処置をしてもらいましょう めまい 頭痛 |
重度 | 息苦しさ 呼吸困難 ⇒ すぐに病院に行きましょう。 頭痛 アナフィラキシーショックの可能性高し 吐き気 めまい |
中度、重度の症状
中度、重度の症状が出ていたら可能な限り早く病院に行って処置してもらってください。
ムカデの毒はハチの毒に似ているため、ムカデに噛まれたのが初めてでも、過去にハチに刺されていたらアナフィラキシーショックが出る可能性があります。
アナフィラキシーショックに関してわからない人はこちらのサイトを参考にしてください。
軽度の症状
抗ヒスタミン成分のステロイド軟こうを塗ります。

サイトによってはいろんな軟膏を紹介しているものがあります。
ステロイドの強い、弱いで子供用、大人用で分けて紹介しているサイトもあります。
でも、いろいろ紹介されても迷ってしまって、どれを買えばいいのか?
どれが効くのか?
分からなくなってしまいますよね。
うちはリバートレッキングツアーの催行を家業とし、屋外での活動が多いですが、いつでも「ムヒアルファEX」一択です。
ムヒアルファEXのメリットは取扱説明書にも書かれていますが、
- 使用開始年齢目安が生後6か月以上
だということです。
子供から大人まで安心して使用できるのは大きなメリットです。年齢に応じて虫刺され用の軟膏をいくつも準備するのは面倒ですよね。
ひとつであらゆる人に対応できる薬はネイチャーガイドにも一般のご家庭にも強い味方になります。
数日後
傷跡も残らず、普通の腕に戻りました。現在も後遺症など特にありません。痛みと腫れだけの症状ならムヒアルファEXを塗って数日経てば完治しました。
ムカデ退治
この記事の前半には書いていませんが、娘が噛まれた時、治療と並行してムカデ退治も行っていました。
就寝時に噛まれたので、もちろん布団をすぐにチェックしました。
掛布団をめくって確認していくと、早速タイワンオオムカデが出てきました。
下の写真のような奴でした。

ムカデコロリでやっつけました。
お勧めの点は、
- 臭いがない
- べたつかない
- 20㎝ぐらい離れていても吹き付けられる
- サッシなどに吹き付けておくことで予防効果がある
です。
ここで気になることがあります。聞いたことありませんか?
ムカデはつがいで活動している?
- 5-6月 繁殖期 雌雄で行動している姿を見かけることがある
- 7-8月 産卵期 母ムカデと子ムカデが一緒に行動している
- 9-10月 親離れ期 子供のムカデをよく見るようになる
2匹で行動している時は、5-8月が多いようです。
1匹退治した後、部屋の掃除をしましたが、もう一匹は見つけられませんでした。
ムカデは夜行性なので、やはり就寝時が怖いので、これを使うことにしました。

ムカデに効かないタイプもあるので、しっかり取扱説明書を読んで、ムカデに効く奴を購入しましょう。
上記の商品はムカデに効きます。
虫ころりアース噴射!!
購入し、取扱説明書を熟読。
要点をリストアップすると、
- ペットにはかからないようにする
- 飲食物、食器、衣類、子どものおもちゃ、飼料などには直接かからないようにする
- 電化製品にはカバーをかける
- 家具、カーテンなどにも直接かからないようにする
と、書かれているので、布団は他の部屋に移動させました。
そして洋服掛けにはゴミ袋を裂いて広げて、上から降ってくる霧ガスが直接かからないようにしました。
机、タンスにも同様に裂いたゴミ袋を上からかぶせました。
そして、部屋のど真ん中に置いて、噴射!!
「1時間は部屋に入らないでください」と書かれていたので、3時間ほど放置しました。
その結果……

部屋のタンスの下で、このタイワンオオムカデ、お亡くなりになっていました。
「本当に2匹目が室内にいたーーーーーー」
と、家族みんなで雄たけびを上げました。
こわっー。
総括
- ムカデに噛まれたら、患部を水洗い
- ムヒアルファEX塗って
- 患部が腫れて熱くなっているようなら部分的に冷却
- 噛んだムカデは治療がひと段落したら退治。 ⇒ じゃないと心配で夜、寝れません
- その晩はアイスノンをタオルで巻いて冷やしつつ娘さん寝落ち ⇒ たぶんほとんど冷やせていません
- 痛みは翌日まで持続した
- 1か月ほどで傷跡は消失。今ではどこを噛まれたのかもわからないほどに回復
- 同一室内に二匹目のムカデがいる可能性あり
- 虫ころりアース(ムカデ用)で隠れている二匹目も退治するのをお忘れなく



参考サイト
ムカデの毒の成分や毒腺、毒針の場所などを詳細に解説してくれている、医学博士の監修した「タスクル」のサイト
「m3.com」医療従事者のみ登録可能な医療サイト。「ムカデ咬傷には加温か冷却か」の記事内でお医者様たちの意見がまとまっていない様子が無料で見られます